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慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)症例

慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)症例(増井)

症例左膝関節痛を認め、近医にて単純Ⅹ線で脛骨に異常陰影を指摘され当科を受診す。
単純X線像
大腿骨、脛骨骨幹端部に骨破壊・硬化像を認める。
CT・MRI
大腿骨、脛骨骨幹端部に骨破壊・硬化および骨膜肥厚像を認める。
大腿骨、脛骨骨幹端部および周囲軟部組織に炎症像を認める。
血液検査WBC: 8900/ul、CRP: 2.7mg/dl、ESR:71mm/107mm、IgG: 1350mg/dl、IgA: 299mg/dl、IgM: 142mg/dl C3: 136mg/dl、C4: 31mg/dl、CH50: 55U/ml、抗核抗体: 8.9IU/ml、RF: <3.0U/ml 、ASO: <20ml
治療経過血液生化学検査で軽度炎症反応が上昇、CTおよびMRIにて大腿骨、脛骨骨幹端部に骨破壊・硬化像と同部に炎症像を認めたため、初診時に感染性骨髄炎を疑い、抗菌薬の投与を開始した。2週間ほど抗菌薬を投与したが疼痛ならびに炎症反応の改善を認めないため、腫瘍性病変などを除外するために切開生検術を施行した。

病理組織像:リンパ球浸潤を伴う慢性炎症像
培養検査:陰性
  • 単純X線:硬化像と溶骨像が混在
  • 血液生化学検査:炎症反応が上昇
  • 細菌培養検査:すべて陰性
  • 多巣性関節炎
  • 病理組織学的所見:慢性炎症像
・・・・CRMOと診断

全身骨シンチ:下顎骨、左大腿骨遠位骨幹端部、脛骨近位骨幹端部、足関節に異常集積像を認める。

下顎骨CT像:骨破壊・硬化・骨膜肥厚像を認める。
CRMOの特徴Giedion、Van Howe et al.
  • 2か所以上の骨に対称性あるいは多発性に発生
  • 症状の寛解と増悪を繰り返す
  • 全身症状は軽微
  • 細菌培養検査は陰性で抗菌薬に反応しない
  • 病理組織で慢性炎症像を示す
  • 単純X線像上、骨幹端部に骨融解、硬化、骨膜反応、重層陰影
  • 予後良好、診断が確定すれば抗生剤投与の必要はなく、症状増悪時に消炎鎮痛剤を投与する
Huber et.al J Pediatr 2002;141:198-203
  • 診断時年齢が18歳以下、特に10歳の前後の女児に多い
  • 多発性、かつ6カ月以上にわたり症状の寛解と増悪を繰り返す
  • 全身症状は軽微
  • 細菌培養検査は陰性
  • 典型的な組織所見(急性・慢性炎症)
鑑別診断
感染性骨髄炎、Ewing肉腫、ランゲルハンス細胞性組織球症など

合併症
  • 炎症性腸疾患
  • 皮膚疾患(感染・痤瘡・壊疽性膿皮症)
  • CRMO、先天性赤血球異形成貧血、掌蹠膿疱症を合併するMajeed症候群の責任遺伝子としてLPIN2が報告されている。
    Ferguson PJ et. Al Curr Opin Rheumatol 2007;19:492-498
治療
  • 非ステロイド系抗炎症剤
  • 抗菌薬
  • ステロイド
  • ビスフォスフォネート
  • 生物学的製剤