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胸部大動脈瘤の治療

胸部大動脈瘤とはどんな病気ですか?

老化やその他の原因で、大動脈の一部が弱くなり、ふくらんだものを動脈瘤と言います。腹部大動脈瘤は、おなかに拍動する固まりを触れることもあり、比較的発見しやすいのですが、胸部大動脈瘤の場合は体の外から触れることができず、無症状に経過するため、サイレントキラーと呼ばれています。かのアインシュタインや石原裕次郎の命を奪った恐ろしい病気です。胸や背中に痛みを感じた場合には、破裂の兆候の可能性がありますので、緊急手術が必要になるケースもあります。

それは深刻な病気ですか?

初期の段階で動脈瘤がまだ小さい場合は、大きな危険性はありません。しかし、後期の段階で動脈瘤が拡大し続けると、大動脈の壁は次第に薄くなります。弱くなった大動脈の壁が血流の圧力に耐えることができなくなると、大動脈瘤は破裂し、生命に危険が及びます。

胸部大動脈瘤の治療

胸部大動脈瘤の直径が6cmを超えると、破裂の危険が高くなりますので、治療を行うことを薦められます。主な治療法には以下の2つの方法があります。

  • 開胸手術
  • ステントグラフトを用いた血管内治療

開胸手術とは?

この方法では、胸を切って開き、動脈瘤ができている部分の大動脈をグラフトとよばれる繊維性のチューブ(人工血管)に置換します。 開胸手術は確実な治療方法として有用ですが、体に大きな負担をかけ、主な合併症として脳梗塞や対麻痺(下半身不随)が5~15%に認められ、死亡率も6%(2008年国内データ)と報告されています。 手術後、患者さまは通常集中治療室に滞在し、その後2週間以上の入院を要します。

ステントグラフトを用いた血管内治療とは?

ステントグラフト(新型人工血管)を用いた血管内治療は1991年に始まった比較的新しい治療法です。腹部大動脈瘤に対しては2006年より、胸部大動脈瘤に対しては、2008年から使用できるようになったばかりです。胸を切って開くことなく、足の付け根、あるいは下腹部から動脈の中に管を挿入し、血管の中にステントグラフトを留置することで、大動脈瘤はふたをされることになります。 この方法の切開部は、開胸手術での切開部より小さいため、不快感が少なく、回復が早いことが知られています。

また、安全性も証明されています。 国内では胸部大動脈瘤の2割程度にしか、ステントグラフトを用いた血管内治療を行なっていませんが、千葉西総合病院では、新しい技術を導入することにより、8割以上の方にステントグラフトを使用した治療を行っています。 とは言うものの、その他の医療処置とおなじく、ステントグラフトを用いた血管内治療も合併症の危険を伴います。また、術後の定期検診が重要で、問題が発生した場合には追加の治療を要します。

重要な注意事項

ステントグラフトはすべての患者さまに適応されるとは限りません。それぞれの利点と欠点がありますので、医師にご相談下さい。
ステントグラフトによる治療は、国内のすべての施設で施行できるわけではありません。当院においては治療法を選択することができるため、患者さまの状態にあわせてより適切な治療を選択できます。この治療についての詳細は、心臓血管外科外来までご相談下さい。