部門

高気圧酸素治療業務

高気圧酸素治療室での臨床工学技士(CE)の業務は、装置の日常点検、装置の操作、患者様への治療説明、治療前のボディチェック等を行っております。
治療中は、血圧計と心電図を装着し常時モニタリングしています。

高気圧酸素治療とは?

大気圧下(空気中の酸素21%)において肺に取り込まれた酸素は血液(赤血球)のヘモグロビンと結合します。これを結合型酸素といいます。また、炭酸飲料(コーラやサイダー)の中に炭酸ガスが溶け込んでいるように、一部の酸素は血液中に溶け込んでいます。これを溶解型酸素といいます。これらの酸素が体内の各組織(心臓や脳など)に送られます。しかし、結合型酸素において血液中のヘモグロビンは酸素と結合できる量は限りがあり、決められた量以上、酸素の量は増えません。これに対し、溶解型酸素は、「気体(酸素)が液体(血液)に溶け込む量は圧力が高ければ高いほどよく解ける。(ヘンリーの法則)」この性質を利用するとより多くの酸素を体内に取り込むことが出来ます。高気圧酸素治療とは、専用装置のタンク内で高い圧力の環境「2絶対気圧=(海底10mでかかる圧力くらい)」をつくり、そこで100%酸素を吸ってもらい、たくさん酸素を体に取り込んでもらう治療です。この治療により、通常の呼吸時の10~20倍の酸素を体内に取り込むことで、低酸素状態の改善、酸素の抗菌作用、組織浮腫の軽減、末梢循環の改善等が期待されます。当院では、2019年5月より高気圧酸素治療を導入し、2020年4月から2台体制で稼働しております。2023年は、741件の治療を実施しました。

治療中の様子

高気圧酸素療法年間治療件数

疾患2019年2020年2021年2022年2023年
一酸化炭素中毒00200
塞栓症00000
減圧症00000
重症軟部組織感染症、頭蓋内腫瘍90117101127
重症熱傷・凍傷00000
広汎挫傷又は中等度以上の血管断裂を伴う末梢血管障害00000
コンパートメント症候群、圧挫症候群000200
脳梗塞244592000
重症頭部外傷、開頭術後の意識障害・脳浮腫11661500
重度低酸素脳症00000
腸閉塞4483322341
網膜動脈閉塞症06000
突発性難聴63157242118
放射線又は抗がん剤治療を併用される悪性腫瘍2111700
難治性潰瘍を伴う末梢血管障害138398390235145
皮膚移植170000
脊髄神経疾患072500
脊髄炎、放射線障害0241237342430
総件数55210847691044741

治療前の患者様ボディチェック

高気圧酸素治療は100%酸素を使用し、発火の危険性があるためタンク内への持ち込みは原則として出来ません。治療の安全性を保つ為には、確実なチェックが必要になります。そのため臨床工学技士は、看護師と治療前のダブルチェックを右記のチェック表を用いて行っています。

患者チェック表

治療時間

治療時間は、加圧15分、治療60分、減圧15分の計90分です。当院では、2気圧での治療を行っています。

装置の概要

第1種高気圧酸素装置 BARA-MED(小池メディカル社)
内径762mm 全長2600mm×全幅1020mm×全高1460mm

適応疾患と治療回数

  1. 治療7回まで(発症から1ヶ月以内)
    • 減圧症
    • 空気塞栓
  2. 治療10回まで
    • 急性一酸化炭素中毒その他のガス中毒(間歇型を含む。)
    • 重症軟部組織感染症(ガス壊疽、壊死性筋膜炎)又は頭蓋内膿瘍
    • 急性末梢血管障害
      (a) 重症の熱傷又は凍傷
      (b) 広汎挫傷又は中等度以上の血管断裂を伴う末梢血管障害
      (c) コンパートメント症候群又は圧挫症候群
    • 脳梗塞
    • 重症頭部外傷後若しくは開頭術後の意識障害又は脳浮腫
    • 重症の低酸素脳症
    • 腸閉塞
  3. 治療30回まで
    • 網膜動脈閉塞症
    • 突発性難聴
    • 放射線又は抗癌剤治療と併用される悪性腫瘍
    • 難治性潰瘍を伴う末梢循環障害
    • 皮膚移植
    • 脊髄神経疾患
    • 骨髄炎又は放射線障害

患者様へ

高気圧酸素療法は、上記にある幅広い疾患に効果が期待できます。病気、怪我の初期段階から治療することで効果が高まります。もし興味がある、また治療を希望される場合は、各科担当医までご相談ください。ご不明な点、質問等ありましたら治療を担当する臨床工学技士がご説明いたしますので、臨床工学科までお問い合わせください。

関連キーワード

結合型酸素

血液中では、赤血球中のヘモグロビンが効率よく酸素と結合し、これを結合型酸素といいます。通常の空気ではヘモグロビンの98%-99%が既に酸素と結合(酸素飽和度)しており、酸素をその後いくら吸入しても、酸素飽和度は100%以上増加しません。

溶解型酸素

血液に溶け込む酸素を、溶解型酸素といいます。溶解型酸素は酸素の圧力に比例して溶け込みます。大気圧下では、溶解型酸素は少量であり圧力を加えることで増加させます。