外科

虫垂炎

虫垂炎(盲腸)とは

虫垂炎(ちゅうすいえん)とは、大腸の一部である虫垂(ちゅうすい)に炎症が生じる病気で、急性の虫垂炎は一般的に「盲腸(もうちょう)」として知られています。虫垂は盲腸から分岐する袋のような形をした臓器で、この部分に感染や炎症が起こることで症状を起こします。

虫垂炎は日本で年間約8万人以上が発症すると言われている身近な病気で、10〜20歳代に最も多くみられますが、全年齢で発症します。近年は高齢者の発症例も増加しており、注意が必要です。生涯罹患率は7〜14%と報告されています。放置すると虫垂が破れて(穿孔して)腹膜炎を起こし、命に関わることもあるため、早期の診断と治療が重要です。

なお、虫垂炎は医療現場では「アッペ」(appendicitis の略)とも呼ばれます。

虫垂の位置

虫垂は右下腹部に位置しています。具体的には、おへそと右の腰骨(上前腸骨棘)を結んだ線の、おへそ側から約3分の1の地点付近にあります。この点はマクバーニー点と呼ばれ(この線を俗に「盲腸線」と呼ぶこともあります)、虫垂炎の診察で押して痛みを確認する重要なポイントです。「盲腸はどこが痛い?」と聞かれた場合、典型的な痛みが生じる場所はこの右下腹部です。

原因

虫垂炎は、虫垂の内腔(入口)が何らかの原因で閉塞し、内部で細菌が異常繁殖して炎症を起こすことで発症します。主な原因には以下のものがあります。

  • 糞石(ふんせき) — 消化管の内容物が硬く固まったもの。最も多い原因の一つ
  • リンパ組織の腫大 — ウイルス感染や風邪をきっかけに虫垂内のリンパ組織が腫れて閉塞する(特に小児に多い)
  • 異物 — 魚の骨、果物の種などが虫垂に入り込んで閉塞する場合がある
  • 疲労・ストレス・暴飲暴食 — 腸内環境の乱れが炎症の引き金になることがある
  • 便秘 — 便が硬くなり虫垂の閉塞につながる可能性がある

虫垂炎は突然に発症することが多く、上記の原因のすべてを完全に予防することは難しいですが、腸内環境を整えることでリスクを減らすことはできます。

症状

典型的な症状

  • 右下腹部の痛み — 虫垂炎で最も特徴的な症状
  • 食欲不振
  • 吐き気・嘔吐
  • 発熱(37〜38度程度)
  • 歩くと響く、咳をすると響く痛み
  • 下痢または便秘
  • 腹部の張り(膨満感)
  • おならが出にくい・ガスが溜まる

虫垂炎の前兆として、以下のような軽い症状がみられることがあります。

  • なんとなくお腹の調子が悪い・食欲がない
  • みぞおちやへその周りにぼんやりとした鈍い痛みがある
  • 軽い吐き気がある

これらの前兆は数時間のうちに右下腹部の痛みに変わっていくのが典型的なパターンです。大人の場合「胃の調子が悪い」程度の症状から始まることが多く、初期には虫垂炎と気づかないことも少なくありません。虫垂炎は発症から24時間以内に穿孔に至る(組織に穴があく)可能性があるため、「我慢すれば治る」と放置することは大変危険です。該当する症状があれば、なるべく早く病院を受診しましょう。早期の診断と治療開始が重症化を防ぎます。

検査

虫垂炎の診断は、問診・身体診察・血液検査・画像検査を組み合わせて行います。

診断に用いる主な検査

  • 問診・身体診察(身体所見)
  • 血液検査
  • 腹部超音波(エコー)検査
  • 腹部CT検査

治療

かっては緊急での開腹手術が主流でしたが、現在は薬の進化もあり、多様な治療戦略がとられます。

薬物(抗菌薬)療法

虫垂に穿孔などがなく、炎症が軽度な場合は抗菌薬の服用による治療を行います。俗にいう「薬で散らす」治療です。また、まずお薬で炎症をおさえたうえで虫垂を切除する手術(待機的虫垂切除術)を行う場合もあります。成人で炎症が軽度であれば薬物療法での治癒が望めますが、再発する場合があります。

手術療法

薬物療法で症状の改善が見られない場合や、炎症が強い場合、穿孔を伴う急性虫垂炎は手術による治療を行います。炎症を起こしている虫垂を切除する手術となります。昨今は、小さな傷で行えて社会復帰も早い腹腔鏡での手術が主流となっています。当院では全例腹腔鏡にて手術を行なっています。

腹腔鏡手術のメリット

  • 傷が小さい(5〜12mmの穴を数カ所) — 術後の痛みが少なく、傷跡が目立ちにくい
  • 感染リスクが低い — 手術操作が腹腔内で行われるため、傷口感染を起こしにくい
  • 社会復帰が早い — 開腹手術に比べて回復が早い
  • 腹腔内全体の観察が可能 — 他の疾患との鑑別や、合併症の確認がしやすい

予防のためには

虫垂炎は虫垂の入口が便や異物などで塞がれることで、虫垂内部で細菌の繁殖に伴う炎症が起こる病気です。入口の閉塞は様々な原因で発生するため、そのすべてを予防することは難しいと考えられます。ただし、以下の内容を心がけていただくことで、リスクを減らすことは出来ます。

  • 食物繊維の摂取:食物繊維は便通を整えるため便による閉塞を防ぐ効果が望まれます。
  • 十分な水分摂取:水分の摂取が不足すると便が硬くなり便秘に繋がります。
  • 適度な運動:運動は腸の蠕動運動を活発にし、便秘の予防に効果的です。
  • 食事に含まれる異物に注意する:魚の骨などが原因として閉塞が発生する場合があります。食事の際は異物ごと飲み込まないように注意しましょう。

よくある質問と回答

Q
虫垂炎(盲腸)の疑いがある場合、何科を受診すればよいですか?
A

消化器外科(当院では外科)を受診ください。

Q
「盲腸」と「虫垂炎」は別の病気ですか?
A

同じ病気です。

 同じ病気です。正式には「虫垂炎(急性虫垂炎)」といいます。「盲腸」は俗称で、盲腸は虫垂の根元にある大腸の一部を指す解剖学的な名前です。

Q
入院日数の目安は?
A

入院日数の目安は治療内容により異なります。くわしくは下記をご参照ください。

腹腔鏡下虫垂切除術(合併症なし):約3〜5日
穿孔性虫垂炎の手術:約7〜14日(炎症の程度にもよる)
抗菌薬治療のみ:約3〜7日

Q
「薬で散らす」ということを聞きますが、薬で治せるのでしょうか?
A

軽症(穿孔なし)であれば、抗菌薬治療で8〜9割程度は改善が見込めます。ただし、治癒後1年以内に2〜4割が再発するという報告があり、再発した場合は手術が検討されます。

Q
手術後、社会復帰はいつごろからできますか?
A

約1週間後が目安となります。

デスクワークであれば約1週間後から復帰可能な方がほとんどです。力仕事や重いものを持つ作業は約3〜4週間目以降をおすすめします。

Q
放置するとどうなりますか?
A

腹膜炎を起こし、命に関わることがあります

放置すると虫垂が破れて(穿孔して)腹膜炎を起こし、命に関わることがあります。発症から24時間以内に穿孔する可能性があるため、「我慢すれば治る」と放置することは大変危険です。早めの受診をお願いします。

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