専門医療センター

両側下腿発蜂窩織炎症例

両側下腿発蜂窩織炎症例(増井)

症例 19歳、女性
主訴 発熱、両側下腿発赤・腫脹
MRI


皮下脂肪組織に広範囲に炎症像を認める
皮膚生検組織所見 皮下脂肪組織の小葉隔壁を中心として皮下結合組織に炎症反応を認め、
好中球とリンパ球が混在して浸潤している。部分的に腫大した内皮細胞
を有する血管炎を認める。
診断 結節性紅斑、好中球皮膚症などの皮膚科領域疾患の疑いで皮膚科依頼。
都内大学病院へ転院後、結節性紅斑の診断となる。
ポイント
  • 多発性、抗生剤に反応しない急性軟部組織病変
    *結節性紅斑
  • 下腿の伸側に生じる痛みを伴う紅色結節を主徴とする急性炎症性疾患
  • 組織学的には脂肪織炎
  • 原因不明が半分以上
  • 原因が明らかのものでは、溶連菌などの細菌感染が最も多い
  • Behcet病や Sweet病などの好中球の活性化を伴う疾患、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患、白血病を含む悪性腫瘍、関節リウマチそのほかの自己免疫疾患の合併
  • 鶏卵大程度の境界不鮮明で、浮腫状の圧痛を伴い、皮下に硬結を触れる紅斑が下肢伸側を中心に出現
  • 咽頭痛や全身倦怠感や関節痛などの全身症状が先行または合併
  • CRPの上昇や白血球の増加、赤沈の亢進などの炎症症状
  • 原因に応じた治療と対症療法を行う
  • 軽症の場合は局所の冷湿布と安静と下肢の挙上
  • 疼痛に対しては非ステロイド抗炎症薬を投与
  • 発熱や関節痛などの全身症状が強く、感染症が否定された場合は副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン15~30mg/日程度)を使用
類似皮膚疾患:好中球皮膚症
  • 定義:非感染性・好中球機能亢進・真皮への好中球の浸潤をみる疾患の総称
  • 壊疽性膿皮症;pyoderma gangrenosum(PG)、Sweet病
  • 壊疽性膿皮症
    • 抗生剤に反応しない
    • 細菌培養検査:すべて陰性
    • 非連続性・多発性潰瘍
    • 病理組織学的所見:真皮に高度の好中球の浸潤
    • 発症要因:潰瘍性大腸炎・Crohn病・大動脈炎症候群・関節リウマチ・Behcet病・軽微な外傷や外科手術、発症要因不明(20~30%)
    • 臨床経過:急激発症型、くすぶり型。 両者ともに自然寛解をすることあり。
    • 病理所見:著明な好中球浸潤、マクロファージや巨細胞の出現を認める。
    • 治療:創処置及び二次感染予防、原疾患の治療、ステロイド内服
    • 術中写真および病理組織像




潰瘍形成、強い好中球浸潤、血管増生を伴う線維芽細胞の増生を認める