鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアとは
鼠径ヘルニア(そけいへるにあ)とは、太ももの付け根の箇所(鼠径部、鼠径管)の膜が薄くなったり、穴が開くことで腹腔内の臓器が飛び出してしまう病気です。患者さんが非常に多い一般的な病気で、俗に「脱腸」として知られています。性別では、男性に多くみられます(男女比約8:1)。全年齢で発症しますが、特に中高年以上での発症が多く、40歳以上の男性は特に注意が必要と言えます。
ごく稀に発生する、穴に臓器がはまり込んで戻らない「嵌頓(かんとん)」を起こさない限りは放置しても差し支えありませんが、痛みや不快感がある場合、整容上の理由などから治療のご希望がある場合はQOL(生活の質)の観点からも治療の対象となります。
分類
臓器が飛び出す位置によって以下の3つに分類されます。
| 種類 | 飛び出す場所 | 特徴 |
| 外鼠径ヘルニア | 鼠径管の内側(内鼠径輪)から | 最も多いタイプ。全年齢で発症。先天性(小児)にもみられる |
| 内鼠径ヘルニア | 鼠径管の底(Hesselbach三角)から | 中高年の男性に多い。腹壁の筋膜が弱くなって発症 |
| 大腿ヘルニア | 大腿管(大腿輪)から | 女性に多いタイプ。嵌頓を起こしやすく、注意が必要 |
原因
主な原因として鼠径部の筋膜(おなかの中の壁)が弱くなること、また腹圧がかかることの2つが挙げられます。
筋膜が弱くなる原因
- 加齢:程度の大小はありますが、誰でも年齢とともに筋膜や組織は衰えます。最大の原因といえます。
- 先天的な組織の弱さ:生後間もなくで自然に閉じる鼠径管が閉じきらないことで穴が残ってしまう場合があります(小児・乳幼児)
- 過去の手術等による筋膜の損傷
腹圧が高まる原因や状況
- 重いものを持つ
- 慢性的な咳
- 便秘
- 肥満
- 立ち仕事
- 妊娠
症状
- 立ち上がったり、お腹に力を入れたりしたときに膨らみができる
- 太ももの付け根の付近にピンポン玉〜こぶし大の柔らかい膨らみができる
- 太ももの付け根の付近に不快感、違和感を感じる
- 太ももの付け根の付近に痛みを感じる
横になると膨らみが消え、立ち上がると再び出てくるのが特徴です。
治療
治療は原則として手術にて行います。手術は人工素材のメッシュシートで穴を覆う方法をとります。現在はほとんどの場合、身体への負担の軽い腹腔鏡手術にて行われます。手術を行う場合の入院日数は2~3日です。
主な術式
TAPP(経腹腔的腹膜前修復術)
腹腔内からメッシュを当てて穴を塞ぎます。現在、最も広く行われています。左右両側同時の手術も可能です。
TEP(完全腹膜外修復術)
腹腔の外側からメッシュを当てます。手術歴があり、腹腔内が癒着している可能が高い場合などに選択されることがあります。
腹腔鏡手術のメリット
上記の術式はいずれも腹腔鏡手術です。腹腔鏡手術のメリットは以下の通りです。
- 傷が小さい(5〜12mm程度の穴を数カ所開けるのみ)
- 術後の痛みが少ない
- 社会復帰が早い
- 再発率が低い(メッシュ修復術で約1〜2%)
よくある質問と回答
消化器外科(当院では外科)を受診ください。
残念ながら、自然に治ることはありません。
鼠径ヘルニアは鼠径部の筋膜の損傷が原因です。損傷は手術にて人工の膜(メッシュシート)で塞がない限り、自然に治ることは原則としてありません。
2~3日です(腹腔鏡手術の場合)
まず嵌頓(膨らんだまま戻らない)が起きている場合は命に関わりますので、緊急手術が必要です。
乳幼児、女性の場合は嵌頓にいたるリスクが高いため、早めの手術が推奨されます。
成人男性の場合、痛みや違和感などがなく日常生活上お困りでなければ、経過観察とする場合もあります。ただし経過観察を選んだ方は、少なくない割合で、数年以内に痛みなどの症状が出て結局手術を受けているという報告もあります。
3~4週間後あたりが目安となります。
メッシュが安定するまで一定期間が必要です。力仕事や重いものを持つ作業は約3〜4週間目以降をおすすめします。
なお、デスクワークは約1週間後から復帰可能。うつ伏せ姿勢は2週間程度避けてください。
名前は似ていますが、すべて別個の病気です。
- 脱腸:腸が太ももの付け根から飛び出す(鼠径ヘルニアの俗称)
- 脱肛:いぼ痔(内痔核)が肛門から飛び出す
- 直腸脱:直腸の粘膜が肛門から飛び出す
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