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大動脈瘤があると言われている方、あるいは
知人、家族の大動脈瘤のことが心配な方へ(7)
心臓血管外科部長 市原 哲也
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前回までで、解離とそうでない大動脈瘤についての概要をお話しましたね。この一連の話の中で、急性大動脈解離の診断の困難さについて述べたことがございましたが、それを改めて認識させる例が多々ございますので、まずは2名の方について報告申し上げましょう。題しまして、”危ない、その腰痛!!”です。
最初の方は、60代男性で、腰痛をおよそ10年間患っておいででした。その日もやはり腰が重かったのですが、”いつもと違う”と感じはしましたが、”いつものように”整形外科を訪ね、”いつものように”湿布を処方して貰い、”いつものように”帰ろうとなさいましたが、あまりの痛さに顔をゆがめておいでのところを看護師に見つけられ、再度、医師の診察を受けたところ、”そのうちMRIを撮ろう。”ということで痛み止めを貰ってお帰りになりました。その夕方、腰の痛さは軽くなるどころか、ますます強くなり、冷や汗をかく程であり、奥様が見るに見かねて救急車を呼び、近くの救急病院に運ばれました。そこでは、CTを始め色々な検査が進められ、やっと診断がついたのですが、その診断は”尿路結石”でした。これは、簡単に申し上げますと、”腎臓から膀胱にいたるおしっこの通り道に石ができたもの”ですが、この石が動く時に腰やら背中に激痛が走るのです。こう診断され入院となりましたが痛みはますます強くなり、胸まで苦しくなって来て、とうとう、血圧が下がり、数分後には心臓が止まってしまったのです。至急、処置がなされましたが、残念ながら帰らぬ人となってしまいました。病理解剖の結果、死因は”急性大動脈解離による心のう穿破”つまり、大動脈解離のため大動脈が破れ、心臓のまわりに血液が充満して心臓が押しつぶされ、動けなくなったために止まってしまった、ということです。
御遺族が後に、私に電話を下さり、事のあらましがわかったのですが、”もっと早くわからなかったのでしょうか?”としきりに訴えておいででした。”残念ですが、なかなか見つけられない病気なんですよ。”と申し上げるのがやっとで、”この病気は頭の中にあれば簡単に見つけられますよ。”とは、とても申し上げられませんでした。
次の方は、50代男性で、腰痛を訴えて近くの病院へいらっしゃいましたが、最初の方との違いは、”突然の激烈な腰痛”でした。これまで、どこも痛みはなく、いたって元気にお過ごしで、この度は仕事で車の運転中、後ろから腰のあたりを蹴飛ばされたような痛みに襲われ、路上に停車し、しばらく休んでから、再度運転して御自身で近くの病院へいらっしゃいました。さて、そこでの診断は”椎間板ヘルニア”でした。これは、よくある病気でして、いわゆる”ギックリ腰の激しいもの”とお考え下されば痛みはお察し下さるでしょう。痛いですよね、あれは。湿布と痛み止め座薬を処方され、退院となりましたが、痛みはますます強くなり、背中から胸にかけても痛くなり、冷や汗をかく程で、自分で運転できないと判断なさり奥様に電話して迎えをお願いなさいました。奥様がご主人のお顔を御覧になったところ、”これはただ事ではない”とお感じになり、再度医師の診察を仰いだのですが、”ヘルニアはとても痛いんだ。痛み止めを使うしかない!”と一喝され、やむなくその病院を出て、知人に相談したところ、当院へ行けと言われてお越しになりました。答えはもうおわかりでしょう?そうです、急性大動脈解離で、そのまま緊急手術となりました。幸いにも元気に退院なさり、社会復帰なさいました。
今回は、明暗を分けたお二方について述べましたが、このような例は、枚挙に暇がないほど多く見受けられるのです。腰痛でも、”いつもと違う”とか、”突然の”とかいう患者の言葉は非常に大切で、急性解離や大動脈瘤破裂の診断の鍵を握るものでさえあるのです。ですから、診察にあたった医師や、問い掛けた病院関係者には、感じたことを感じたままに、我慢せず、遠慮なさらずお話下さい。診断の助けとなるどころか、決め手になると申し上げても過言ではありません。
以上で、今回の”危ない、その腰痛!!”は終わりにします。いかがですか?
医師が、死に至る病気を知らないということはとても恐ろしいことですね。ですから、医師は自分の専門分野以外は知らないではいけないのです。見逃すとすぐに死ぬ病気は最初に疑うくらいの素養は持ち続けなければいけないなと自戒を促される毎日です。
皆様にお話せねばならないような事柄を続々と報告して参ります。また、皆様におかれましては、大動脈瘤や解離について知りたいことがございましたら、ぜひ連絡下さい。
大動脈瘤破裂、解離で大切な方との突然の悲しいお別れになってしまうのを未然に防ぎたい、常にそう願ってやみません。連絡をお待ち申し上げます。
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連絡先
千葉西総合病院代表
047-384-8111
大動脈センター 市原哲也
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