大動脈センター

2009年の大動脈瘤手術件数は計341例(胸部213例、胸腹部13例、腹部115例)でした。

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大動脈瘤が心配な方へ(4)

前回は、大動脈瘤はなぜ治療の必要があるかについて述べました。今回は、“太くならずに破裂する、もうひとつの大動脈瘤;解離”について述べたいと存じます。

“解離”を、簡単に申し上げますと、“薄皮1枚でかろうじて破れないでとどまっている状態”ですね。大動脈の壁は、顕微鏡で覗きますと、3枚から成り、 “解離”は、この内側の2枚に裂け目ができ、2枚目と一番外側の壁との間に血液が流れ出し、まるで本来そこに血液が流れていたかのように流れてしまう状態です。この、2枚目と一番外側との間には、本来、隙間はありませんので、ここに血液が流れ出すということは、サロンパス(貼っている方を見かけなくなりましたが)を勢い良くはがす感じに似ています。そうです、あの、“バリッ”という感じです。あれをはがすのは、非常に痛いですね。よく、祖母が風呂に浸かりながら剥いでおりました。こうして、血液の新しい、あるいは偽の通り道が突然にできてしまい、偽の通り道は、まさに“薄皮1枚”で血管の外と隣り合わせということになるのです。ですから、“破裂寸前”という状態と言えるのです。崖崩れに例えるならば、崩れた岩石が防御用の金網に引っかかってかろうじて落ちて来ないという状態ですね。こういう現象が、胸の大動脈で突然起きるのです。そこに、もともと太いところ(大動脈瘤)があろうが無かろうが関係なく、つまり、正常の太さの大動脈にも起きるのです。これが“大動脈解離”なのです。ある時突然に起きるものですから、正しくは“急性大動脈解離”と呼びます。そして“解離”の怖さは、この“薄皮1枚”が、破れることなのです。それは、“即死”を意味しますが...。“急性大動脈解離”は正しく治療されないと、24 時間以内に90%の方が亡くなるのです。これがこの病気の恐ろしさなのです。

血管の壁の中で、しかも突然にこういう現象が起きますと、やはり、痛いのです。胸から背中にかけて、“ダンプカーにはねられたような”とか“突然後ろから蹴飛ばされたような”痛みなのだそうです。時には、その痛みで気を失ってしまう方もおいでです。また、“痛い!!”と思った瞬間、痛みのためではありませんが、気を失い、数時間後に気がついたら左手足が動かないというような、あたかも脳卒中を思わせる症状もあるのです。あるいは、血液が漏れ出し、心臓を包む袋(心嚢と言いますが)に漏れ出した血液がたくさんたまり、心臓を押さえつけて動きを悪くし、血圧が出せなくなり、そのため、ゲーゲー吐いたり、生あくびばかりしていたりで、何だか意識がおかしくなってしまう方もあります。

大抵は救急車で運ばれるのですが、病院到着から診断確定までの時間は、10分から一昼夜まで、非常に差があります。胸や背中が猛烈に痛くて、かつ血圧が 200もある、などという典型的な症状ならばすぐに診断がつきますが、脳卒中を思わせる症状の場合には、やはり脳卒中が最初に疑われるものですから、長い “回り道”をした後やっと見つかることになるのです。特に、気を失っているところを見つけられ、病院へ運ばれたような場合は、気がつくまでは、余程経験豊かな施設でないと、そこですぐに“解離か?”と疑われることはまずありません。大抵は、気がついた時に“背中が痛い”とか“胸が痛い”とか訴えがあって CTを撮影したら解離だった、というような見つかり方が多いのです。こうして、簡単に10時間や20時間は過ぎてしまうのです。

このように色々な症状があるものですから、“解離”の診断は経験不足だと非常に難しいのです。ともすると“迷宮入り”してしまい、間に合わずに亡くなってしまった後、病理解剖(亡くなった後、病院側から御遺族に、死因究明のため解剖させて下さいとお願いするのですが)で診断がついた、という、非常に悲しい見つかり方もあるのです。もちろん、状態の悪くなり方が余りに急激だと、いくら早く診断をつけても間に合わないということもありますが...。

こうして診断されたなら、次には治療が始まります。次回は、“解離の治療”について述べたいと存じます。

大動脈瘤のことで日頃気になっていることがあれば、どのようなことでも構いませんので、まず、連絡下さい。大動脈瘤破裂、急性解離で皆様の大切な方と突然悲しいお別れになってしまうのを未然に防ぎたい、ただそれだけです。連絡をお待ち申し上げます。

(5)に続く

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大動脈センター 市原 哲也